※本記事の統計は警察庁「令和6年における山岳遭難の概況等」(2025年6月19日公表)の数値です。本記事にはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)を含みます。情報確認日:2026年10月30日
「登山って、一人で行っても大丈夫?」「ソロ登山デビューしたいけど危ないかな」
山仲間がいないと、どうしてもこの壁にぶつかりますよね。
結論から言うと、条件を満たす山なら、ソロで登っていいです。ただし、人生で初めての登山をソロにするのだけはやめてください。
「ソロは危険だからやめとけ」でも「気にせず行こう」でもありません。線を引ける場所に、はっきり線があります。この記事では、警察庁の統計で何が起きているかを見たうえで、一人で登っていい条件と、絶対に一人で行ってはいけない条件を分けて書きます。
数字で見る|単独登山は「亡くなる割合」が2倍以上

警察庁の統計によると、令和6年の山岳遭難は発生件数2,946件、遭難者3,357人。そのうち死者・行方不明者は300人でした。
注目したいのは、単独と複数の差です。
- 単独登山:遭難者1,311人のうち、死者・行方不明者179人=13.7%
- 複数登山(2人以上):死者・行方不明者の割合=5.9%
その差、7.8ポイント。遭難したあと亡くなる割合が、2倍以上になっています。警察庁自身も「単独登山は、トラブル発生時の対処がグループ登山に比べて困難になることが多い」として、複数人での登山を呼びかけています。
ただし、この数字を鵜呑みにしないでください
正直に書いておきます。この「単独登山1,311人」には、警察庁の注記のとおり「山菜・茸採り」や「観光」で入山した人も含まれています。登山装備で山に入ったソロ登山者だけの数字ではありません。
なので「ソロ登山は2倍危ない」と単純に読むのは正確ではないと思っています。それでも、一人だと助けを呼べない場面があるという構造は変わりません。大事なのは割合そのものより、なぜ差がつくのかです。

なぜ一人だと死亡率が上がるのか|「気づいてもらえない」
遭難の内訳を見ると、理由がはっきりします。道迷いが30.4%、転倒が20.0%、滑落が17.2%。上位3つで7割近くです。
この3つに共通するのは、「本人が動けなくなる」事故だということです。足をひねって歩けない。滑落して意識がない。道を外れて、自分がどこにいるか分からない。
仲間がいれば、誰かが通報できます。動ける人が下山して助けを呼べます。一人だと、その役をやってくれる人がいません。携帯が圏外だったら、誰にも気づかれないまま時間だけが過ぎます。
ちなみに統計では、遭難した2,946件のうち72.8%は現場から携帯電話などで連絡ができています。圏外が珍しいわけではありませんが、連絡できないケースも4分の1以上あるということです。
3人いても危なかった話
私が高妻山に男3人で登ったとき、雨上がりの鎖場でメンバーの一人が足を滑らせました。鎖を握っていたので事なきを得ましたが、心臓が止まるかと思いました。

あの日はずっと霧で、展望はゼロ。きつい登り返しを励まし合い、鎖場では互いの足場を声で確認しながら進みました。正直に言って、一人だったら途中で心が折れていたと思います。
体力的な問題だけではありません。「ここで引き返すべきか」を判断するとき、相談できる相手がいるかどうかは大きいです。一人だと、無理をする方向に判断が傾きます。止めてくれる人がいないので。
ソロで登っていい条件|5つ全部に当てはまるなら行っていい
ここからが本題です。次の5つを全部満たすなら、ソロで行っていいと考えています。一つでも欠けるなら、その日は誰かと行くか、別の山にしてください。
- 登山そのものが初めてではない。最低1回は、経験者と一緒に歩いたことがある
- 登山道が整備されていて、道標が多い。そして人が多い山である
- 日帰りで、行動時間が短い。暗くなる前に、余裕をもって下山できる
- 鎖場・岩場など、落ちたら致命傷になる区間がない
- 天気が安定している。予報が崩れそうなら、その日は行かない
1番はとくに譲れません。安全対策の記事でも書きましたが、最初の1回は経験者との同行か、ガイド付きのツアーを強くおすすめします。歩き方そのものを教えてもらえますし、危ない場所で声をかけてもらえます。「山の歩き方」は、本を読んでも身につきません。

条件に合う山の例としては、筑波山や鋸山のような、人が多くて道がはっきりしている低山が挙げられます。どちらも電車で行けます。
これに当てはまる日は、一人で行かないでください
- 人生で初めての登山
- 鎖場・岩場があるルート(濡れていると難易度が別物になります)
- 残雪期や冬の山
- 人が少ないマイナーなルート(倒れても誰も通りません)
- 天気が崩れる予報が出ている日
- 体調が万全でない日
「せっかく予定を空けたから」で決行しないでください。山は逃げません。
ソロで行くなら、必ずやる6つ
条件をクリアしても、やることは増えます。仲間がやってくれていた役割を、全部自分で持つことになるからです。
1. 登山計画書・登山届を出して、家族と共有する
これがソロでいちばん大事です。警察庁も、登山計画書・登山届について「家族や職場等と共有しておくことにより、万一の場合の素早い捜索救助の手掛かりとなる」と書いています。
提出先は、登山口の登山届ポスト、インターネット、登山地図アプリから都道府県警察や自治体へ。一人だと「帰ってこないこと」に誰も気づけません。どこの山に、どのルートで、何時に帰る予定かを、必ず誰かに伝えてください。
2. エスケープルートを事前に調べる
警察庁も「トラブル発生時に途中から下山できるルート(エスケープルート)等を事前に把握する」としています。一人だと、途中で引き返す判断を自分だけで下すことになります。逃げ道を知っていると、その判断がしやすくなります。
3. 登山地図アプリと紙の地図を併用する
遭難の最多が道迷い(30.4%)である以上、ここは手を抜けません。警察庁も「登山地図アプリと紙の地図を併用することで、より正確な位置を把握することができるため、道迷いの防止につながる」と明記しています。アプリだけに頼らないでください。
4. 予備バッテリーとヘッドライトを持つ
スマホは地図であり、通報手段であり、位置情報の発信源です。電池が切れた瞬間、その全部を失います。警察庁も、GPS機能付き携帯電話は救助要請手段として有効としつつ「通話エリアが限られることやバッテリーの残量に注意する必要がある」としています。
ヘッドライトも同じです。詳しくは日帰りでもヘッドライトが必要な理由に書きましたが、一人だと「誰かが持っている」が成立しません。

5. 笛(ホイッスル)を、手の届く場所に付ける
ソロ登山でいちばん効く小物が、これだと思っています。
動けなくなったとき、人は叫び続けられません。痛みがあればなおさらですし、体力も削られます。笛なら、息を吹くだけで音が出ます。声よりも遠くまで届きますし、「自然界にない音」なので人に気づいてもらいやすい。これは一人のときほど意味を持ちます。叫ぶ役を代わってくれる人がいないからです。
ひとつだけ注意です。ザックの中に入れたら意味がありません。ショルダーハーネスなど、倒れた姿勢のままでも手が届く場所に付けてください。数グラムの装備なので、付けっぱなしで困ることはありません。

6. 引き返す基準を、家を出る前に決めておく
「何時になったら山頂を諦めて下山する」を、出発前に決めてください。山の中で決めようとすると、だいたい甘くなります。止めてくれる人がいないぶん、ルールを先に作っておくしかありません。
あわせて、山岳保険も検討してください。救助費用は自己負担になることがあります。
よくある質問
Q. ソロ登山は本当に危険なのですか?
A. 統計上は、遭難したときに亡くなる割合が単独13.7%・複数5.9%で、単独のほうが高くなっています。ただしこの単独の数字には山菜採りや観光での入山も含まれます。危険の正体は「ソロであること」そのものより、動けなくなったときに助けを呼べないことです。
Q. 初めての登山を一人で行くのはダメですか?
A. やめてください。歩き方や危険箇所の見分け方は、人に教わるのがいちばん早いです。最低1回は経験者と一緒に歩いてから、ソロを考えてください。
Q. 高尾山のような人が多い山ならソロでいいですか?
A. 道が整備されていて人が多く、日帰りで行動時間が短いなら、条件は満たしやすいです。それでも登山届と引き返す基準は用意してください。
Q. 登山届は低山でも出すべきですか?
A. 出してください。警察庁は、計画書を家族や職場と共有しておくことが捜索救助の手掛かりになるとしています。一人のときほど効きます。
Q. ソロ登山で、笛は本当に必要ですか?
A. 持っておいてください。動けなくなったときに叫び続けるのは体力的に無理がありますが、笛なら息を吹くだけです。ザックの中ではなく、ショルダーハーネスなど手が届く場所に付けるのがポイントです。
Q. 道迷いが一番多いのはなぜですか?
A. 統計でも道迷いが30.4%で最多です。警察庁は、登山地図アプリと紙の地図の併用が道迷いの防止につながるとしています。
まとめ
- 遭難時の死者・行方不明者の割合は単独13.7%・複数5.9%(警察庁・令和6年)
- ただし単独の数字には山菜採りや観光も含まれる。危険の正体は「助けを呼べないこと」
- 人生で初めての登山をソロにするのはやめる。最低1回は経験者と歩く
- 整備された道・人が多い・日帰り・鎖場なし・天気安定。5つ揃えばソロで行っていい
- 行くなら登山届、エスケープルート、紙地図併用、予備バッテリー、笛、引き返す基準の6点セット
一人で山に行けるようになると、登山の自由度は一気に上がります。だからこそ、線を引く場所だけは間違えないでください。
【情報源】警察庁生活安全局「令和6年における山岳遭難の概況等」(2025年6月19日公表・PDF)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の行動はご自身の判断と責任でお願いします。


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